今日のテーマは、『過半数が月10万円以上を投資する現状に、感じ取ることができるバブル』です。
今週の日本市場は高市相場に対する期待感が行き過ぎたと見られ大幅下落してスタートしましたが、日経平均株価はわずか2日間で下落分を取り返して、先週末の水準まで戻してきています。
同様に米国市場も堅調で、昨日時点、NYダウ平均株価は4万6000ドル台半ばで推移しており、こちらも過去最高水準を維持している状況です。
恐らく、世間の9割超の個人投資家は保有資産の評価額が高騰しており、非常に気分良く過ごすことが出来ているシーズンと言えますよね。
しかし、一般的なイメージと異なり、リスクはこういう場面ほど増大する傾向にあるため、大半の投資家が浮かれている今の状況にこそ『異常さ』を感じ取る能力が必要なのかも知れません。
先週の公式ブログでもそのことには触れていますが、ここから先は誰も正確には予測ができず、いつ下落がスタートしても不思議ではない領域に足を踏み入れつつあると感じています。
この件にも繋がりますが、先日、某メディアが実施した調査結果に興味を惹かれるものがありました。
それは、資産形成に励む10代から80代の個人投資家を対象に行われたアンケート調査で、約2000人から得られた回答をまとめたというもの。
それによると、20代から40代の方々の投資に対する積極性が目立ち、20代の約3割、30代・40代に至っては過半数が毎月の新規出資額として10万円以上を拠出していると回答しています。
さらに、30代の4人に一人、40代の約3割は毎月新たに20万円以上を投資にまわしていると答えており、その数字は、私が漠然とイメージしていたものより遥かに大きな金額となりました。
直近、株価は平成以降の『失われた30年』の呪縛からようやく開放されて、資本主義経済における世界標準が日本にも導入されたと感じられるようになってきました。
ただし、会社員の平均年収は未だ400万円台半ばで停滞し続けており、各種税金や社会保険料の負担がアップしている現状、日本人の可処分所得が増加しているとは決して言えません。
それを考慮すると(回答者の基準値が高いことは理解していますが)一般の方々の過半数が月10万円以上を拠出している状況は、株式市場に対する期待感が異常に高いと言えるのではないでしょうか。
しかし、その積極性と相反して、気になる数字もあります。
同調査では、回答者全体の約半数が投資をスタートしたきっかけとして『NISA制度の活用』と回答しており、実際に約3割は2020年以降に初めて投資をした新参者であるとしています。
また、3年前の時点と投資額を比較した時、約3割が金額を倍増(以上)したとも回答しており、ロシアーウクライナ戦争以降の上昇相場しか知らない方々が安易に増額していることも見て取れます。
これらの方々は、直前のピークから市場が半値以下に落ちたサブプライム危機(2007年ー2008年)はおろか、僅か1ヶ月で株式時価総額の3割強が吹き飛んだコロナショックも経験していません。
私見では、ここまで高揚感の高まった株式市場の次なる下落は、直前のピークからの下落幅が15%を超える少し大きなものになると予想しています。
果たして、それが実際に起きたとき、直近5年未満に投資をスタートした方々が平生を保つことが出来るのか。
恐らく、それが起こることを想定すらしていないと想像しますが、そのような社会全体の高揚感にも、株式市場の『バブル』を感じ取ることができると考えます。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太