今日のテーマは、『仕事がやめられない時代、日本人にとって老後は贅沢品になりつつある』です。
先日の気になる報道で、
トヨタ自動車は65歳以上のシニア従業員を対象として、
再雇用の上限を70歳に拡大することが公表されました。
現時点、同社の定めるいわゆる定年退職の年齢は60歳。
そこから、
65歳まで再雇用する制度は、元々存在していましたが、
全職域対象に70歳まで働く環境を整備すると言います。
表面的に受け取れば、とてもポジティブな報道ですよね。
しかし、
『真実』に目を向けて、全体像をきちんと把握したとき、
決して、利点だけの甘いものではないと理解が出来ます。
先ず、
第一に認識すべきことは、話題にあがるトヨタ自動車が、
決して、『終身雇用』という制度を奨励していないこと。
事実、
豊田章男社長は一次政権時代オフィシャルの場において、
『企業側にはインセンティブがない』と明言しています。
それもそのはず、
トヨタに限らず全ての企業はボランティア集団ではなく、
第一義として『利益追求』をミッションに掲げています。
そして、
年間で『5兆円』もの巨額利益を生み出すトップ企業は、
市場参加者(投資家)から常に効率を求められています。
同社は、
日本で1番金持ちであると同時に、1番マークも厳しく、
巨大な規模にも関わらず、遊んでいる暇などありません。
それでは前述の雇用延長(70歳)はどういうことか。
1つは、
今後、日本全体で高齢者の雇用を促進したい日本政府が、
先導役としてトヨタに圧力を掛けたことが予想出来ます。
トヨタと言えど、
国(政府)からの要請を無碍に退けることはできない為、
渋々、ポーズとしての『雇用延長』の姿勢をとっている。
しかし、
決して全社員が対象ではなく、高度な知識や技能を持ち、
職場から継続的に働くことを期待される人のみ対象です。
言葉を借りれば、
企業側に『インセンティブ』があると判断された人のみ、
最長70歳まで働くことのできる機会が得られるのです。
また、
その関門をパスしたとしても、現行の再雇用制度と同様、
再雇用期間における給与は個別に決定されることになる。
つまり、
有能な人材は現役水準に近い報酬が維持されるのに対し、
インセンティブのない人材は、収入が現役の半分になる。
労働市場においては、高齢者といえど優遇はされません。
ところで、
話は変わりますが、総務省の調査では、2023年時点、
65歳ー69歳の就業人口は全体の52.0%に上ります。
もちろん、
全てが経済的な問題に帰結している訳ではありませんが、
高齢者2人に1人が仕事をやめられないということです。
この数字は、
私たちが、その年齢を迎える20年ー30年後において、
確実に増加して多数派を占めるようになると予測します。
『老後』という言葉・概念自体、贅沢品になりつつある。
今後の時代を生きる身として理解しておくべき事柄です。
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昨年(2023年)よりセミリタイア生活に入っており、
今後の主催セミナー(オープン形式)の開催は未定です。
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井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太