今日のテーマは、『ゼロ・サムであるはずの株式市場で9割以上のプレーヤーが勝つことの異常さ』です。
先週のウィーク・ディ(平日)は私用により仕事の手を止めることになったため、思いがけず、公式ブログを通じた情報配信も10日間ほどストップしてしまいました。
それでも、日課として株式市場の動向は日々チェックするようにしていて、私にとってはリフレッシュ期間となった一週間も日・米の両市場とも非常に堅調に推移しています。
日本においてはその勢いが週明けの今も続いており、代表指数・日経平均株価は史上初となる5万円の大台を突破して、市場全体の高揚感を体感できるレベルに到達してきました。
『失われた30年』という言葉に象徴されるバブルの呪縛から解き放たれてから、わずか1年7ヶ月ほどで1万円以上値上がりして、最速で次なるステージに足を踏み入れたことになります。
ただし、個人的には、株式市場の過熱感を測る指標として、米国の代表指数・NYダウ平均株価を『目印』に用いるほうが適切だと考えています。
と言うのも、時価総額として約7.5兆米ドルの日本市場が世界全体に占める割合は約5%であるのに対して、米国のそれは70兆米ドルとほぼ10倍であり、世界シェアも50%に迫る水準にあるから。
良くも悪くも、世界中の株式市場は米国市場の影響を受けずにはいられず、グローバルに波及するバブルの形成も崩壊も、米国がリードする形で起こる確率が最も高いと想像できます。
NYダウの話に戻すと、こちらは先週末(10月24日)終値として初めて4万7000米ドルを超えており、日本と同様かそれ以上に力強く・底堅く動いていることになります。
また、米国の政策金利の利下げが来年以降も続くことを考慮すると、ピーク(最高到達点)はまだまだ先になりそうだということが恐ろしいところですね。
兎に角、世界の株式市場は雲一つない快晴で、このまま天にも届くほど上昇していきそうだと錯覚してしまいそうです。
ところで、最近、気になる会話を耳にする場面に遭遇しました。
仕事の内勤作業で大阪・都心のカフェを利用していたところ、近くに居合わせた20代前半と思しき男性2人が『投資』をテーマに話題展開するというものです。
会話から推測するに2人は何かしらの先輩・後輩という関係性で、唐突に、先輩から後輩に『NISAってやってる?やってないなら、やった方がいいで』と勧めるところからスタートしました。
そして、『俺なんて去年からオルカンを積み立ててるだけやけど、もう20万円以上も利益出てるで』と衝撃の告白(?)をしたところで、後輩サイドの食い付きもマックスに達したことが見て取れます。
恐らく、それ(20万円超の利益)は彼らの月収に匹敵するほどの金額であり、自らの労働とは別にそれを得たという先輩の話は、後輩にとってジャパニーズ・ドリームと呼べるものだったのでしょう。
実際に、俄然やる気を出した後輩は、先輩の手ほどきのもとネット証券の口座をその場で開設することとなり、無事に(?)NISAでの取引を進められる準備を整えていくのでした、、、、
ここで、聡明な読者の皆さんは気付かれていると思いますが、先ほどの話に出てきた『先輩』は決して投資の天才でもなければ、先見の明のある時代の寵児などでもありません。
前半で述べた通り、世界全体が『バブル』の高揚感に浮かれ始めた今、本来はゼロ・サムであるはずの株式市場で9割以上のプレーヤーが勝っている(含み益がある)という異常事態にあります。
つまり、彼(先輩)はただただバブルの波に乗っている参加者の一人に過ぎないということです。
ちなみに、私自身は彼ら(先ほどの話の先輩・後輩)とは逆行する動きをしており、NISA口座内でこれまで数年にわたり積み上げてきたオルカン(世界株式)に準ずるファンドを順次解消しています。
投資の有名な格言に『賢者が最初にやることは、愚者が最後にやること』というものがありますが、この言葉は完全に真理を表していると考えます。
バブルの熱狂に乗じて踊り狂うのか、エンディングの音楽に気付いて帰り支度を始めるのか、投資家にはちょっとした判断を求められる局面に来ています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太





