今日のテーマは、『子ども・子育て支援金制度の独身税批判に対して、日本政府に求められる覚悟』です。
ご存知の方も多いと思いますが、来年(2026年)4月からいよいよ『子ども・子育て支援金制度』がスタートします。
簡単に説明すると、主に、国民全体から一人あたり250円ー450円を医療保険に上乗せして徴収する約1兆円を財源として、従来の子育て支援金制度をさらに拡充していこうという試みです。
これにより、妊婦支援給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金、育児期間中の年金保険料免除等の支援が現行制度以上に充実したものになると言われています。
また、15歳になる歳で打ち止めされていた児童手当も18歳までの3年間支給が延長され、所得制限は撤廃、第3子以降の子供については一人あたり月額3万円に増額されることが決定しています。
さらに、妊娠・出産時には国から10万円相当が支給されることとなり、休業前の給与水準に対して3分の2とされた育児休業給付については、収入の落ち込みなく10割まで引き上げることも決定。
これらを総合すると、これまで子どもが0歳ー18歳の期間に支給されていた支援金総額の約200万円が、新制度に移行すると約350万円と2倍に迫る上昇を実現できるとされています。
もちろん、新制度によりすべての問題が解決するとは考えませんが、少なくとも『子供を持つこと』に対してポジティブな影響を与えることに異論を唱える人はいないと想像します。
これは私見ですが、日本政府には『これで完成形だ』などと楽観的な判断をすることなく、時代背景や社会の状況の変化に対応すべく、今後もこの分野の制度拡充を実行して欲しいと願っています。
そして、残念なことは、冒頭からご紹介してきたこれらの動きに対して、若者や中高年でも結婚していない人たちを中心に『独身に対する税金だ!』という批判が少なからず出ているということです。
確かに、新制度に充当する財源は国民から幅広く徴収されるにも関わらず、その給付先(支援先)は子育て世代・子育て家庭に限定されているため、そのような批判が出るのは分からなくもないです。
しかし、現時点で出生率が1.2人台に低迷して急速に少子化が進展している日本において、人口を一定数以上に保つ(現実的には減少速度を鈍化させる)ことは国家運営を司るうえで急務です。
間違って伝わって欲しくないのは、結婚する・しない、子どもを持つ・持たないという選択は完全に個々人の自由であり、それぞれの立場に対して善・悪の判断をしたい訳ではないということ。
ただ、これからも日本が国家として存在し、ある程度の国力を維持していくためには、未来を担う子どもたちの増加なくして、その実現は不可能だということも事実でしょう。
与党は『実質的な負担は生じない』などと逃げの答弁をするのではなく、『当然痛みは伴うが、今実行しなければいけない』というスタンスで国民に対して覚悟を示さなければならない。
また、野党も劇場型で批判ばかりを繰り返すのではなく、真摯に日本の未来を考えて、現実的な解決策を示すことに労力を集中投下して欲しいと考えます。
時代を変える大事を実行するには、すべての人間に対して良い顔をするのではなく、時として嫌われ者に徹する覚悟も必要。それが今、日本の政治家たちに最も求められていることです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太