今日のテーマは、『ジンバブエが選択した無抵抗主義により、相互関税の問題は解決するか』です。
米国が『相互関税』を武器としたディール(取引)を本格化させたことにより、世界経済が連日揺れに揺れていますね。
日米両市場とも、仮に今日が好調(不調)であっても、明日以降の動向はまったく読むことが出来ない日々が続いています。
まさに『コイン投げゲーム』が如し。そこに規則性は存在しておらず、独立事象のランダム・ウォークを繰り返すのみです。
それから先も、米国が『アメリカ・ファースト』を追い求めていくのは自明ですが、すべての物事に共通して『完勝』が必ずしも最善策とは限りません。
現実世界では何事にも『相手』が存在するので、ある程度で双方が歩み寄り『落とし所』を見つけていくことが大切になると考えます。
そんな中、アフリカ南部に位置するジンバブエが米国からの輸入品に対する関税を一時的にゼロにすることを表明し、注目が集まっています。
世界各国が米国への対立姿勢を強める中、同国は対極の選択をして、歩み寄りの姿勢を示すことで事態の打開を図ろうとしているのです。
大統領のムナンガグワ氏は『米国からの輸入拡大・促進と並行して、米国向けの輸出の成長を後押しする(政策である)』ことを自身のソーシャル・メディアを通じて強調。
果たして、そのようなユートピア(理想郷)は本当に存在するのでしょうか?
残念ながら、この選択(対米関税ゼロ政策)により相互関税の問題が解決する可能性は、ジンバブエもその他の国々も極めて低いと考えます。
何故なら、経済的な観点での『無抵抗主義』については、米国(トランプ政権)は嵩に懸かって一気に攻め込んでくる可能性が高いからです。
仮に、同様の戦略を日本が採用したとしたら、第二次大戦の敗戦直後に匹敵するほどの壊滅的なダメージを受けることになる。もちろん、街が焼け野原になることはありませんが。
約100年前、インドの政治家・指導者であるマハトマ・ガンディーは、非暴力・不服従の無抵抗主義を貫くことで英国からの独立を勝ち取りました。
しかし、今回、それが米国(トランプ政権)に対して通用するとは限りません。
何故、ジンバブエが無抵抗主義を選択できたかと言えば、ストレートに表現すれば些末な小国だから。
実際、昨年1年間の同国の対米輸入額は4380万ドル(約60億円)に留まり、対米輸出額も6780万ドル(約90億円)と極めて少額。日本の1%にも満たない数字(*)です。
*2024年、日本の対米輸出額は1482億ドル(22兆円超)であり、684億ドル(10兆円超)の貿易黒字を記録しています。
加えて、2000年代のはじめ年率2億%のハイパーインフレを起こしたことは記憶に新しく、経済的ゾンビ国による捨て身の戦略とも言えますね。
日本を始めとして、主要先進国と米国(トランプ政権)との本当の闘いはこれから本格的にスタートしていく。
私たちの生活にも直結する問題なので、目を離すことが出来ません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太