今日のテーマは、『日本人が定義するパワーカップルが米国では平均以下という残酷な現実』です。
昨日の公式ブログでは『東京で年収1000万円以下の生活を送るとき、必要になる経済的制約の覚悟』と題して、低所得での東京ライフが実質的に破綻してしまっていることをご紹介しました。
かつて、給与所得者の中では『年収1000万円』が成功の一つの基準とされてきたと思いますが、令和の時代に突入して、その数字が持つ輝きは年々薄れてしまっているのではないかと想像します。
その理由のひとつは、良くも悪くも、その『存在』が以前ほど珍しくなくなっているということ。
例えば、先月8日に経団連が公表した大手企業の夏季賞与の最終集計結果では、給与所得者の夏季ボーナスの全体平均額が97万4000円(前年比3.44%増)と過去最高額を大きく更新しました。
業界別では、建設業:約127万円、機械金属:約123万円、商業:約117万円と、1回の賞与支給額が100万円をオーバーする業界も散見されるようになってきています。
この状況も後押ししてか、国税庁による民間給与実態統計調査では、資本金10億円超の大企業全体で『年収1000万円以上』の該当者が2023年時点で123万人まで増加したことが示されている。
この数字は、統計の10年前(2013年)と比較して170%に相当するもので、基準を満たす人たちの割合は『11人に1人』から『7人に1人』と身近なものに変化してきています。
この結果から見ても、確実に以前よりも希少価値(珍しい存在)は薄まってますよね。
また、『年収1000万円』が持つ輝きが薄れつつあるもう一つの理由は(1000万円という)その数字が持つ効力・実質的価値も低下していることを認めざるを得ないから。
一例を示せば、2000年当時はトータルで2割弱だった(表面上の)税・社会保険料負担が、2023年には25%超まで増加しており、可処分所得(手取り収入)は確実に減ってしまっています。
また、コロナ禍を経て急激に進行した物価上昇の影響をモロに受けて、20年前と比べて減ってしまった残額の効力も年々弱まってしまっていることは体感レベルで理解できますよね。
近年では、夫婦とも上場企業に勤務してそれぞれが年収700万円ずつを稼ぎ、世帯年収が1400万円を超える人たちを表現する『パワーカップル』という言葉も生まれました。
確かに、日本全体の3%未満に属する彼ら・彼女らが少数派であることは間違いありませんが、果たして、本当に『勝者』と呼ぶに相応しい豊かな人生を送れているかと言えば疑問が残ります。
ちなみに、2023年時点、経済の覇権国・米国の平均年収は『約94,000米ドル』と言われており、現行の為替レートで換算すると日本円としては『約1380万円』に相当します。
平均年収がこの数字ですから、一馬力で『パワーカップル』に匹敵することになりますね。
もちろん、米国内の物価は日本のそれより高い水準なので単純比較は出来ませんが、ひとつの数字として、米国(及び先進諸国)とそのような格差があることは事実です。
日本国内という狭い視点で物ごとを捉えるのではなく、常に世界標準を意識することは、これからの時代を生きていく上で必要不可欠な感覚なのかも知れません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太