今日のテーマは、『米・大統領選で敗北した大きな政府の構想は、日本で上手く機能するか』です。
昨日6月5日、石破政権が掲げる肝煎りの成長戦略である『新しい資本主義実行計画(案)』の全容が判明しました。
実行計画は2022年に策定されていたものの、進捗状況や社会背景の変化を考慮して定期的に改定が予定されており、昨年終盤に誕生した新政権としては初めてのことです。
それによると、短期視点では、実質賃金の年率1%上昇が定着する社会の実現が目標とされており、国・自治体が民間に対して発注する事業で価格の引き上げを徹底することが明記されています。
また、医療・介護の分野における公定価格の引き上げが推進されており、それらも含めて社会全体の賃上げに対して積極的に介入していくというスタンスが示されます。
さらに、官・民合計の国内投資額を現行の約100兆円から倍増させて、今から15年後の2040年度には年間200兆円規模まで持って行くという数値目標も明示。
これらを総合すると、全体を通して発信されているメッセージは『国(政府)が主導して社会全体の賃上げと価格転嫁を積極的に推進していく』ということでしょうか。
確かに、社会全体として大きな潮流の変化を起こすには、慣性力(現状を維持する力)を断ち切るだけの大きなプレッシャー(外力)を働かせる必要がある場面はあるかも知れません。
実際、今回の改訂案は理屈的には正しく、計画通りに実行・実現されれば、社会全体として好循環(主に安定的な賃金上昇)が生まれそうに思えそうですよね。
しかし、理屈的に正しいことが、現実世界では正しくなくなることは世の常で、日本経済が計画通りに成長軌道を描けるかは不透明になっています。
一般的に、国(政府)が国民生活・市場への介入を強めることは『大きな政府』と表現されており、米国において前・バイデン民主党政権が推し進めていたのがそれでした。
しかし、昨年末の大統領選で民主党候補のカラマ・ハリス氏が敗北したことは記憶に新しく、それは前政権下で蓄積された『大きな政府』に対する不満が爆発した結果と言えます。
反対に、勝利した共和党は一貫して『小さな政府』を掲げており、社会に対する政府の介入は最小限に留めて、それ以上は市場原理に任せた方が上手く機能するという姿勢が支持されている。
政治家と言えど要は公務員であり、社会の現場で起きていることについては素人で、机上で導き出された正解が、そのまま成立するかは分かりませんからね。
果たして、米国で敗北した『大きな政府』の構想は、日本で上手く機能させることが出来るのか。
このケースでは目標が数字で明確に示されているため、答えも数年後に示されることになります。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太