今日のテーマは、『資本主義社会を生きる私たちは、経済的合理性を無視することは出来ない』です。
先ずは大前提から整理すると、2025年現在の日本国は経済システムとして『資本主義』を採用しており、世界に存在している約200の国・地域の9割超が同システムを選択しています。
決して『共産主義』ではありません。
私自身、ここでその善悪を語るつもりは更々ありませんが、歴史上、後者(共産主義)の経済システムは人類繁栄という観点で上手く機能した試しがないと認識して良いと考えています。
そして、地球上の大半の国々が経済システムとして『資本主義』を採用している以上、そこに生きる私たちは『経済的合理性』を無視して活動することなどは不可能だとご理解ください。
しかし、基本の『き』とも言うべきこの大前提を、世の中の人たち100%がきちんと認識しているかと言えば、決してそうではないというのが現実です。
最も典型的な例は『公務員』という言葉で括られる方々でしょうか。
誤解を恐れず言えば、彼ら・彼女らは社会全体から『与えてもらうこと』に慣れ過ぎてしまっており、自らが『社会に価値を提供する』という感覚が欠如してしまったネバーランドの住人です。
実際、現実世界から隔絶された小さなコミュニティーに属する彼ら・彼女らには、『経済的合理性』という言葉の認知は愚か、その観念を理解することすら不可能であると推測します。
昨年10月、公式ブログで『岡山県真庭市のアクティビスト化について思うこと』と題して、同市が公費から約1億円を投じて、JR西日本株を取得したということをご紹介しました。
この動きは、決して株式投資を活用した財テクで財政を潤そうという目的ではなく、株式を保有することで『JR西日本』に対してアクティビスト(もの言う株主)化していこうというもの。
もちろん、最も強く求めるのは同市内を走る(大)赤字路線・姫新線の存続で、学生・高齢者をはじめとした交通弱者を救済して、都市としてのプレゼンスを維持しようとする狙いがあります。
これについて、以前、某メディアが市長に対してインタビューする記事を目にしたことがあります。
しかし、残念ながら路線存続を求める理由はソフト(心情)面ばかりに終始しており、本日のテーマ『経済的合理性』という観点が完全に欠落してしまっていると感じました。
正直、JR西日本がテコ入れして路線環境を改善したところで、旅客も貨物も事業継続に必要なレベルのV字回復など起こり得ないし、勝算のない先行投資はさらなる赤字拡大に繋がりかねない。
そして、急速に人口減少が起こる日本においてそのような地方都市(過疎地)は星の数ほど存在し、それらが同様の主張をし始めたら、上手くいっている部分(大都市圏)すら機能不全に陥ります。
予め断ると、テーマとして取り上げる岡山県真庭市は私の出身地に近く、該当する域内には親族も居住しているため、真庭市に対する親近感は比較的あるほうだと自負しています。
現地の生活環境は自らの実体験を通じて理解しており、今回の件に関しても、完全なる『外野』から無責任にヤジを飛ばしている訳ではないことをご理解ください。
話を戻すと、全国に線路網が整備されて、鉄道が交通の主軸を担っていた100年前と今の日本とでは、社会を取り巻く環境や私たちの生活様式が大きく異なっています。
日本全体として、人口は都市部(大都市圏)により集中していく傾向にあり、対する地方都市は過疎化の一途を辿り、今後数十年で消滅する自治体が3〜4割存在するという試算もある。
100年前に究極の高級品だった自動車は大衆化されて、それこそ、地方都市では日常生活の『足』として生産年齢人口と同等の数が保有されているのが現実ですよね。
過去の遺産に縋り付き『どうやったら存続できるか』ではなく、近い将来に廃止されることを前提として『どうすれば都市機能を維持できるか』を建設的に考える段階に来ています。
ひとりひとりが、真の意味での『持続可能性』を真剣に考える時代に突入しました。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太