今日のテーマは、『住宅ローン戦略多様化の時代、本当にペアローンは有効な選択肢なのか』です。
正直、
前回に配信したものの内容・時期とも記憶にないくらい、
マイホームについての記事は久々のリリースになります。
恐らく、
古くからの読者の皆さんはご理解いただいているとおり、
私自身、マイホームの取得にポジティブではありません。
理由は大きく2つあり、
先ず、大都市圏を中心に住宅供給が潤沢にある現代では、
賃貸戦略を採用する方が経済合理性があると考えるから。
また、
結婚、出産、子どもの成長・独立、親族や自身の介護等、
様々なライフイベントにも柔軟に対応することが出来る。
さらに、
生活してみないと分からないのが『家』というもの常で、
建て付け等の欠陥や隣人トラブル等リスクは絶えません。
これは、
少し極端な例になりますが、北陸原発で事故が起きれば、
私は直ぐさま大阪を脱出し、安全な土地へと避難します。
このような決断が出来るのも、賃貸戦略ならではですね。
もう一つは、
一般的な日本人にとって巨額の住宅ローンを組むことは、
限られた資産の大部分を住宅に注ぎ込むことになるから。
平成以降、
30年以上も会社員の平均年収は大して変化しておらず、
対して直近の円安の影響を受けて住宅価格は上昇の一途。
仮に、
土地・建物合わせて『5000万円』で取得したとして、
約9割をローンに頼る従来戦略では、利払い・修繕費等、
全てを含めて総額『7〜8000万円』ほどの買い物に。
一般に、
会社員の可処分所得は一生涯で2億円台と言われますが、
前述の金額は決して少なくないため、無視は出来ません。
つまり、
総資産を『マイホーム』に一点集中で投じることにより、
人生全体として、大きな制約を受けることになるのです。
それでも、
今尚、特に地方都市になればなるほど、信仰対象として、
マイホームには熱心な信者さんが沢山いらっしゃいます。
もちろん、
人生における優先順位・価値観は人それぞれ異なるため、
その取得を全否定する訳ではないことをご理解ください。
続けると、
大都市圏・都心部の物件価格が年々上昇するのも手伝い、
近年はペアローンなる選択肢も市民権を得つつあります。
以前であれば、
住宅ローンは世帯主(主に夫)名義1本で契約でしたが、
ダブルインカム(夫婦共働き)が一般化している現代は、
夫婦それぞれの与信を活用して融資を受けることが可能。
単純に、
夫婦それぞれの年収が700万円で同等であったとして、
住宅ローン融資を単独名義(700万円)で受けるより、
2本立て(1400万円)の方が多額を借りられますね。
最近では、
次世代型の団信(団体信用生命保険)もリリースされて、
ペアローン契約者のどちらか一方が返済不能になった際、
二人とものローン残債がゼロになるものすら存在します。
保険会社サイドもニーズを捉えて柔軟に変化しています。
それでは、ペアローンの住宅購入は得策なのでしょうか。
私見では、そう感じません。
何故なら、シングルインカムの与信で購入できないなら、
身の丈を超える買い物であり、手を出すべきでないから。
きっと、対象がほかのもの(マイホーム以外)であれば、
大半の方々がそのような判断ミスはしないはずですよね。
しかし、
『マイホーム』となると途端に財布の紐が緩みますから、
その言葉が持っている魔性性は相当なものだと言えます。
繰り返しますが、
人生の優先順位・価値観は多様化してさまざまである為、
多額のローンを組んでのマイホーム購入は否定しません。
ただし、
自らの人生全体を俯瞰して、冷静な判断をくださないと、
経済的観点で取り返せない致命傷を負うことも事実です。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太