今日のテーマは、『期待の新薬・レカネマブの公定薬価年間300万円は、果たして高いのか』です。
先週12月13日、
厚労省の諮問機関に該当する中央社会保険医療協議会は、
期待の新薬である『レカネマブ』の公定薬価を承認した。
高齢化が深刻化する中、
先進諸国では認知症患者の急増が社会問題化しているが、
過半数を占めるアルツハイマー型に対する治療薬である。
標準的な使用量とする1回:500ミリグラムに対して、
今回中医協より承認された薬価は『11万4,443円』。
1年を52週間換算した時、一人あたりの治療に対する、
年間の薬価総額は『約300万円』となることが分かる。
単純に数字を切り取ると、他疾患の治療に対しては高い。
少しだけ情報を整理すると、
レカネマブ(商品名レケンビ)は、日本企業のエーザイと、
米・バイオジェンが開発に成功したAD治療・期待の新薬。
現時点、
病気の原因と考えられる脳内の異常物質(Aβ)に対して、
直接働きかけることで取り除くという作用機序を有する。
*Aβ:アミロイド・ベータ蛋白の沈着が原因とされる。
残念ながら、
根治薬と言えないものの、現在、市場で供給されている、
情報伝達の補助的役割を果たす薬剤と一線を画している。
これまで、
同様の作用機序(アミロイドβ蛋白除去)を標的として、
国内外のメガファーマが、こぞって開発研究に着手した。
しかし、
治験において、安全性と良好な治療効果を得ることなく、
各社総崩れで無残にも撤退していったという過去がある。
話を戻すと、
レカネマブの投与対象はAβ蓄積が確認されたAD患者で、
症状が軽度と予備軍にあたるMCI(軽度認知障害)の人。
用量としては、
体重1kgあたり10mgを基準とし、患者の標準として、
体重50kgの人は1回あたり500mgを点滴投与する。
もちろん、
患者(親族)の窓口負担は上限3割までに抑えられる為、
本人が年間300万円に迫る金額を負担する訳ではない。
しかし、
レカネマブの薬剤費総額を社会で負担すると考えたとき、
標準用量で1人あたり『300万円』掛かることも事実。
果たして、この薬価を即断で『高い』としても良いのか。
このあたり、
AD患者はもちろん他の要因で家族・親族の介護をしたり、
また子育てを経験したことがある人たちは分かると思う。
これらは、
決して当人(患者・子ども等)だけの問題に限定されず、
主に介護・介助するサイドの労働生産性を奪う事になる。
恐らく、
AD自体は65歳以降で発症するケースが大勢を占める為、
患者さん本人という視点では経済損失がほぼありません。
ただし、
前述の通り、介護・介助するサイドは現役世代が中心で、
この人たちの経済損失は、世帯全体で致命傷になり得る。
単純な話、介護・介助するサイドの人間を基準に考えて、
年間300万円以上の価値創出があるなら、意味がある。
もちろん、
世の中のすべてを経済的観点だけで断ずるつもりはなく、
家族間の『掛け替えない時間』は最も尊いと考えますが。
それでも、
私自身、親族がアルツハイマー病を発症し、進行したら、
単年で300万円を軽く超える経済損失があるのも事実。
10年、20年と継続すると考えれば莫大な損失ですね。
アルツハイマー病の進行が本当に抑制できるのであれば、
レカネマブの薬剤費:年間300万円は決して高くない。
完全に個人的見解になりますが、私はそう考えています。
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2023年1月より【セミリタイア期間】に入っており、
今後の【資産形成セミナー】の開催は、完全に未定です。
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代表 井上耕太