今日のテーマは、『退職金制度の税制改正は、本当に労働市場の活性化が目的か??』です。
遂に、
終身雇用を前提とした、旧態依然の退職金制度について、
政府は『税制面』の優遇を改正する方向で進み始めます。
ご存知の通り、
現行制度では、同一の企業・組織に長期間勤務するほど、
退職金を受け取る際、大きなメリットが存在しています。
しかし、
21世紀も20年以上が経過し、終身雇用が崩壊した今、
長期勤続することに利点を置く制度は、時代に逆行する。
企業の中には、
勤続期間が短いと退職金を支給しないものもあるといい、
そうした慣例を無くすよう、政府も働き掛けるのだとか。
更には、
長期間勤続した際『退職金』の税制優遇を無くすことで、
硬直した労働市場を解放するという目的もあるのだとか。
これにより、
将来的に、成長する産業への人材移転がスムーズになり、
長期的な視点では、日本全体の経済成長にも繋がります。
何やら、
良いこと尽くめのようにも感じられる潮流の変化ですが、
果たして、文面通り受け取っても良いのでしょうか??
もちろん、
一部の方が気付かれた通り、鵜呑みにして良いはずなく、
この動きを進める、日本政府の『真意』は別にあります。
先ほど触れた通り、
現行ルールの退職金制度は長期勤続するほど有利ですが、
税制面での優遇措置は大きく分けて『3つ』存在します。
順に挙げると、
①同一企業・組織の勤続年数に応じて控除枠が増額する。
②課税対象となる退職所得は、控除差引き後の2分の1。
③同一年内に得た他所得と分けて、分離課税で税額計算。
既に広く知られますが、
勤続20年以下部分は『40万円』に年数を乗したもの、
更に、21年以上は『70万円』✖️年数分が控除額です。
1つの例として、
4年制大学卒業後22歳で就職した人が、38年間働き、
60歳時点で『退職金』を得る場合を考えてみましょう。
この時、
退職所得控除額は800万円(40万円✖️20年間)に、
1260万円(70万円✖️18年間)をプラスしたもの。
仮に、
この人に『2500万円』の退職金が支給されていても、
控除額を差し引くと『440万円』にまで圧縮できます。
更に、
課税所得はこれを半分にしたもので、分離課税される為、
退職金にかかる実質的な税負担は『10万円』程度です。
理解される通り、
『2500万円』程のまとまった利益(?)を得ながら、
課税が『10万円』程度で済む所得は、他にありません。
政府は、ここに着手したい訳です。
そもそも、今回対象となる『退職金』を巡る税制改正が、
本当に、労働市場の活性化に繋がるかは大いに疑問です。
もし仮に、
活性化したとしても、人材移転のメイン・ターゲットは、
20代後半から30代、広く見積もって40代前半です。
対して、
税制改正の影響(煽り)を受けるのは50代、60代で、
この点においても『整合性』が取れていないと感じます。
これが40代以降を狙った『増税』であることは明らか。
これから始まる『大増税時代』の序章に過ぎないのです。
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2023年1月より【セミリタイア期間】に入っており、
今後の【資産形成セミナー】の開催は、完全に未定です。
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代表 井上耕太