今日のテーマは、『私たち(日本人)は、先ず自分の心配を最優先すべきかも知れない』です。
先日の公式ブログでは『返済不能にも関わらず最高格付を維持してきた米国債が抱えるジレンマ』と題して、慢性的な赤字体質にも関わらず、米国債が高格付を維持することの不思議をご紹介しました。
その中で、遂に、世界3大格付会社として最後の砦だったムーディーズ・レーティングスも、米国債の最高位(Aaa:トリプルA)を剥奪したことについて触れています。
ただ、裏を返せば、最大手3社がAa(ダブルA)格を維持しているということに他ならず、最高位からは陥落したと言えど、世界全体で見ればまだまだ高い信用力を維持しているという見方も出来る。
そして、その信用はロジックとして証明できるものではなく、軍事力も含めて米国が保有する『パワー』に由来するからこそ、力強く・底堅いという解釈をすることも可能なのです。
しかし、個人や民間企業と同様、(超)巨大国家といえど永遠に『借金』を積み上げながら運営していけるはずもなく、部分的であるにせよ、いつか必ず清算しなければならない時がやって来ます。
それは覇権国(米国)であっても例外はなく、日々、リスクを積み上げながら進んでいます。
と、ここまで米国が抱える不安要素について話を展開して来ましたが、私たち日本人は、先ずは『自分たちの心配』を最優先して考えるべきなのかも知れません。
それについての警鐘は常に発され続けていますが、一つの象徴的な出来事として、日本国債の30年債の利回りが『年率3%』に肉薄しているという事実が挙げられます。
ここでは、債券の基本について詳細に振り返ることは避けますが、代表的な基本事項の一つとして、債券価格と利回りの間には『逆相関』の関係性が成り立っているというものがあります。
つまり、前述の通り、日本の30年債の利回りが上昇して年率3%に肉薄しているということは、市場で買い手が見つからず(正確には減少して)価格が下落していることを意味するのです。
実際、これまで主な買い手だった国内金融機関(特に生保)は買い控えが続いており、昨年(2024年)度の買い越し額は直近20年間で最低の数字を記録しています。
また、今年度に入ってからは海外投資家勢の買い注文も明らかに失速しているとの情報もあります。
更に、中央銀行・日銀のスタンスも黒田東彦・前政権が展開した異次元緩和の方針とは大きく異なり、植田和男・現政権下では利率コントロールのための買い支えも殆ど機能しないと考えるのが自然。
そうなれば、30年債の利回りは『3%』を突破することが終着点ではなく、それを通過点として更なる上昇トレンドを描く可能性も十分にあり得るのです。
と、このように話を進めると、米国の30年債の利回り(年4.996%)と比較しても大差ないことを根拠として、安心してしまう人たちがいるかも知れませんね。
しかし、金融・経済に少し明るい方であれば理解される通り、日本と米国では、社会全体を支配しているそもそもの『金利』のベースポイント自体に大きな開きがあるというのが現実です。
具体的には、現時点、米国の政策金利が『4.25ー4.50%』でコントロールされているのに対して、日本のそれはゼロ金利の呪縛から解かれたと言えどプラス0.5%程度。
これらの基準点を考慮すると、日本の30年債の利回りがいかにベースポイントから乖離して、大きく上昇傾向にあるのかお分かり頂けると思います。
仮に、日本国債が債務不履行になるとした時、市場の需要を供給が大きく上回り、買い手が付かずに金利が急騰してテクニカル・デフォルトに陥るというシナリオが最も可能性が高い。
この予想が当たっているとすれば、超長期債の利回り上昇は不穏な動きですよね。
世界一の借金大国・米国と同等かそれ以上に、日本も大きなリスクを孕んでいる。
日本に居住する私たちも、その事実はきちんと認識しておくほうが良さそうです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太