今日のテーマは、『なぜ、富裕層はクレディ・スイスのAT1債で損失を被ったのか??』です。
今年3月、
クレディ・スイスの実質的な経営破たんが顕在化した際、
世界的にも大きな注目を集めることとなった『AT1債』。
私自身、
世界を代表するコングロマリットの1つが破綻するなど、
予想しておらず、大きな衝撃を受けたのを覚えています。
その老舗金融機関が、
経営再建と、同じく最大手UBSへの売却を完了させる為、
無価値化することを決定したのが『AT1債』なのでした。
この時、
デフォルトさせた債券総額は『160億スイスフラン』、
現行レートで日本円換算『約2.4兆円』もの巨大な数字。
因みに、
『AT1債』自体、一般人向けに広く出回る代物ではなく、
主に、保有資産が『億』を超える富裕層に販売されます。
2023年現在、
日本国内の有資格者は『150万世帯』と言われており、
総世帯数(4885万世帯)に占める割合は『約3%』。
多いと見るか、少ないと見るかは其々の見解によります。
話を戻すと、
『2.4兆円』と言われるクレディ・スイスAT1債のうち、
日本国内における販売総額は、およそ『1400億円』。
さらに、
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が、その内の大部分、
『950億円』を売り捌いたことも問題視されましたね。
そもそも話題に挙がる『AT1債』とは何なのでしょうか。
それは、
発行母体(企業)が倒産した際、債権者への返済順位が、
普通社債等と比較して後回しにされる『劣後債』のこと。
中でも、
償還期限のない(満期の定めがない)『永久劣後債』は、
リスクの高さに比例してリターンも大きくなる金融商品。
クレディ・スイス破綻の際に注目を集めたのはこれです。
もちろん、ジャンク債券であれば、誰も手を出しません。
しかし、
一般的に、証券営業マンが富裕層に勧める『AT1債』は、
海外金融機関が発行するもので利回りは年率6ー7%程。
その中で、
クレディのそれは同時期『年率10%』を提示しており、
富裕層の目から見ても魅力的に映ったに違いありません。
何故なら、
計算上、損益分岐点を『約10年』で迎えることが出来、
それ以降、毎年『金の卵』を生み続けてくれるからです。
ただし、
資産を失った富裕層はもちろん、販売担当の営業マンも、
元本削減条項を正しく理解していたかは疑わしいですが。
しかも、
今回は『UBS』への売却を完了させるため、弁済順位が、
『株式』に逆転されてしまうという不運も重なりました。
『株価』がゼロになるのであれば、誰も引き受けません。
そのため、AT1債の保有者(債権者)を切り離すことで、
公的資金を使わず『潰せない金融機関』を救済しました。
『楽して儲かる仕組みは、この世の中に存在しない』と、
つくづく思い知らされる、好事例だったと感じています。
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2023年1月より【セミリタイア期間】に入っており、
今後の【資産形成セミナー】の開催は、完全に未定です。
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井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太