今日のテーマは、『超富裕層に対する課税強化が止まらない中、日本はアジアの盟主となり得るか』です。
先日の公式ブログでは『超富裕層に対する追加課税の対象拡大により、国家の魅力は高められるか』と題して、来年度の税制改正大綱で興味を惹かれたトピックについてご紹介しました。
その際はまだ具体的な数字まで決定されていませんでしたが、その後、改訂ポイントが公表されたため追加記事としてリリースします。
現行ルールを簡単に確認すると、話題に上がる追加課税は年間所得30億円を超える方々が対象で、総所得から特別控除額の3.3億円を差し引いた後、課税所得に税率22.5%を乗じた数字を算出。
この数字から通常の税法で算出される所得税額を差し引いた時、プラスとして残る数字があればそれを『追加課税』として納税する仕組みです。
2027年度から適用される新法では、適用となる対象者を年間所得30億円超から年間6億円超に引き下げ、特別控除額も1.65億円とこれまでから半減し、反対に税率は30%へと引き上げられます。
仮に、現行制度でボーダーとなる年間所得30億円の人に新ルールを適用した場合、トータルの納税額は年間2.5億円(約6億円→約8.5億円)も増加することになります。
2025年現在、四年制大卒者の生涯年収が(額面で)3ー4億円ほどと言われていますから、可処分所得としてはまるまる一人分に匹敵する金額がアップすることになりますね。
もちろん、年間所得が増えるほど(現行制度と比較した際の)納税額の増加分もアップすることになりますが、心理面も含めて最も痛みを感じるのは、新たに対象者となる年間所得6億ー30億円以下の方々かも知れません。
実際、著名人たちもこの話題に素早く反応しており、対象者(年間所得6億円を超える超富裕層)にとってはまったくメリットのない制度改正になると断言しています。
もしも、国家が彼ら・彼女ら(超富裕層たち)を追い出したいのであれば目的は達成できそうですが、果たして、それが日本にとってポジティブに作用するかについてはまったくイメージが湧きません。
有名な格言で、『金の卵を生む鶏』という話がありますよね。
毎朝一個、金の卵を産み落としてくれる魔法のような鶏がいましたが、飼い主が欲を掻いてそのお腹を切り裂いてしまうと、卵を産んでいた鶏自体を失ってしまったという話です。
例えば、アジアの金融センターとして確固たる地位を確立しているシンガポールや香港は、世界中から『金の卵を生む鶏』を呼び込むことで僅か100年ほどの期間で爆発的な成長を遂げました。
現在、日本が推し進めようとしている政策は、その対極にあるものだと感じています。
私自身、決して批判的な立場ではなく、海外から帰国するといつもその良さを実感しているからこそ、今、日本で起きている流れについて憂いています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太





